信州大学医学部歯科口腔外科レジデント勉強会

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Department of Dentistry and Oral Surgery, Shinshu University School of Medicine


いわゆる有病者の歯科治療

34. 抗癌剤・免疫抑制剤投与中の患者

2000.12.17 張

抗癌剤を使用してる患者:癌、白血病、ホジキン病など

副作用

骨髄抑制:白血球、血小板減少、貧血、出血傾向
消化器系:食欲不振、悪心嘔吐、口内炎(潰瘍性)、舌炎、下痢
肝障害:GOT GPT ALP LDHの上昇
腎障害:BUN上昇、蛋白尿
皮膚:脱毛、発疹、蕁麻疹、光線過敏症
循環器:動悸、心不全
精神:ふらつき、口腔内しびれ感、顔面感覚の異常、色素沈着
呼吸器:間質性肺炎、肺繊維症
泌尿器:乏尿、排尿困難など

歯科治療時の注意点

@最近は外来通院でも抗癌剤を投与されてる患者もいる。問診が重要
A抗癌剤投与5日程度前なら抜歯が行える。
B抗癌剤の種類により骨髄抑制がでる時期が異なるため薬剤名、投与日、量を確認する。易感染性であることにも注意する。
Cメトトレキサート(メソトレキセート)は非ステロイド性鎮痛剤、ペニシリン系抗生剤を併用すると、メトトレキサートの毒性が増強する。
Dシクロフォスファミド(エンドトキサン)はクロラムフェニコール系抗生剤を併用するとシクロフォスファミドの薬効が減弱する。

 

免疫抑制剤を使用してる患者

悪性腫瘍、移植患者(腎、骨髄、肝臓)、ベーッチェト病、乾せん、自己免疫疾患

副作用

悪心嘔吐、傾眠、血圧上昇、頭痛、腎機能低下、肝障害、脱毛

歯科治療時の注意点

@歯科治療に伴うストレスにより自己免疫疾患の症状が憎悪することがある。
Aステロイド剤を投与されてる自己免疫疾患患者は、ストレスに敏感なため主治医に相談して、処置前にステロイド剤を増量したほうが良い。
B多くの患者に貧血を伴うことが多いため出血傾向がみられる。止血に十分注意する。
C白血球減少による易感染性のため歯科治療後に十分な抗生剤を投与する。
D口腔内に病変をもつベーッチェト病、天疱瘡、類天疱瘡、などは局所麻酔により病変部の悪化が認められることがあるため必要以上に刺入点をふやさない。また切開は最小限にとどめる。緊急を要しないなら、潰瘍、びらん、再発性アフタが見られない時期に処置を行う。
Eシクロスポリン(サンディミュンcap)ムマクロライド系、非ステロイド性鎮痛剤(ボルタレン、バキソなど)と併用するとシクロスポリンの腎毒性が増す。
Fタクロリムス(プログラフ)ムエリスロマイシンと併用で腎毒性増強作用がある。

 

<参考文献>

基礎疾患をもつ患者への対応  長崎県保険医協会

治療薬マニュアル2000    医学書院

有病者の歯科治療       医歯薬出版                              


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